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変質者の手毬唄・珍田一耕助シリーズ
第11章 変貌

その日の昼過ぎから警察による本格的な捜査が始まった


警察の方は前回同様、事件発生当時の村人たちのアリバイ調査や被害者発見現場周辺の捜索を重点的に行う意向を示していた


近藤晴海の衣類や所持品がまだ見つかっていないからである




一旦あわび山荘に戻って昼食を済ませた珍田一と磯毛は三本松の下に立っていた


三本松の脇に小さな地蔵がある



「この地蔵は犯行を…犯人の姿を見ていたんですね…」


「そうですなぁ…」


「とりあえず、この道を北へ向かってみましょう」



珍田一と磯毛は三本松のある畦道を小学校とは反対側へ…北へ向かって歩き始めた


この辺りは民家もかなり少なく、歩いている村人を見かける事もあまりなかった


東側に広がる水田で農作業に勤しむ農民を見かける度に、二人は声を掛けて昨日の昼過ぎの話を聞いた



1時間ほどで4人の村人から話を聞くことが出来たが、昨日の犯行時刻は雷雨になる直前だったため、誰もが家の中にいたと言うのだ


それに荷車を引く男が歩いている事など日常ではごくありふれた事だから、誰も気に留めないというのである


確かに言われてみればその通りだ、ココを通る人間のほとんどが農耕を生業としている者達だ。


誰もが荷車を所有しており、誰もが日課のように使用していた…


こうなると犯人の目撃情報を得るのは困難だった


もしかすると、こうした村人の日常的な風景に紛れて犯行を行う事も犯人の計算だったのかもしれない



今回の犯人は思いのほか、頭の切れる手強い相手なのかもしれない…珍田一はそう思わずにはいられなかった




しかし、4人目の農夫から気になる話を聞くことができた




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