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変質者の手毬唄・珍田一耕助シリーズ
第12章 「逃げ水」
わずか数日の間に、内藤トシの様子はすっかり変わってしまっていた
話し掛けても返事は無く、目を合わせる事さえなかった
「ここ二日位で急にボケが酷くなってしまって、今じゃアタシの言葉もよう分からんみたいで…」
初枝の表情からは、母との生活で生じる疲労を感じた
トシは縁側にチョコンと座って外を見ながらボソボソと独り言を言っている
「トシさんは一日中、あんな感じで?」
「ええ…昼間は、ああやってブツブツ喋ったり、唄を歌うだけなんです…。」
「そうでしたか…今朝、また犠牲者が出たので、色々と聞きたい事があったのですが…」
すると、トシが何やら唄を歌い始めた
「あ、この前も歌っていた手毬唄ですね…」