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変質者の手毬唄・珍田一耕助シリーズ
第12章 「逃げ水」

ウチの裏の井戸端でぇ

老婆が三人集まってぇ

二人の老婆の言う事にゃ


長老 息子の嫁探しぃ

東西南北駆け回りぃ


見つけた娘は花屋の娘

器量良しだが犬好き娘


三度の飯より犬好きでぇ…

犬とじゃれ合い遊んでばかり







「こ、これは…ま、間違いありません…、犯人は手毬唄を真似ていたんです」



珍田一は例によって、無意識のうちに頭をぐちゃぐちゃと搔き回し始めた

袴の上には彼の鳥の巣のような頭髪から落ちたフケが降り注いでいる



「そうだったのかぁ…、おのれぇ…小癪な真似をしおって…」



トシは既に歌う事を止めて、ブツブツ独り言をしゃべり始めていた



「つ、続きは無いんでしょうか…手毬歌は二番までで終わりなんですか?」


「いえ…確か、以前は三番くらいまで歌っていたと思うんですけど…」



初枝は自信なさそうに答えた



「初枝さんは、三番の歌詞がどんな内容だったか覚えていませんか?」


「す、すみません…アタシは母の唄う手毬唄には興味なかったもんですから…」


「で、では、どなたか他に、手毬唄を知っていそうな人物に心当たりはないでしょうか?」


「…なんせ古い唄ですから…母意外で知っていそうな人となると…陰核寺の和尚さんか、横浜の叔母くらいしか思い当たりませんが…」



「トシさんにはお姉さんか妹さんがいらっしゃったんですか」


「ええ、2歳違いの妹なのでやっぱりもう高齢ですけど…東京のA草の鰻屋に嫁いで、今はもう隠居してると思います…」


「そうですか…」

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