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変質者の手毬唄・珍田一耕助シリーズ
第12章 「逃げ水」
珍法は二人を自宅の客間へ案内した
以前と変わらず温和そうな顔立ちで、二人を快く接してくれた
「お二方共…せっかく休暇だというのに、面倒な事件に関わってしまって大変ですなぁ…」
「はぁ…」
「で?今日はまたどういったご用件で…?」
「えぇ…実はこの村に古くからある手毬唄の事を和尚さんに聞きたいと思いまして…」
「手毬唄…?」
「はい…こういった内容のものなのですが、和尚さんならご存知かと思いまして」
珍田一は手毬唄の歌詞を書いた紙を珍法に手渡した
珍法はその紙をまじまじと覗き込んだ
「こりゃあまた随分と懐かしい…子供の時分に、耳にしたことがありますよ」
「では、和尚さんはこの手毬唄をご存知なんですね?」
「えぇ知っていますよ。…もっとも、聞いたことがあるだけで歌えやしませんがねぇ…」
「この手毬唄の歌詞なんですが…和尚さんは、この続きをご存じないでしょうか?」
「う~ん…ちょっとわかりませんなぁ…。私ぐらいの歳の御婦人ならあるいは覚えているかもわからんが…」
それはもっともだ…男である和尚がが手毬唄を憶えているはずはなかった
「和尚さんはこの唄をご存知の方に心当たりはありませんか?」
「トシさんなら知っとるんじゃなかろうか?」
「トシさんの所へは先程、伺ったのですが…続きは分からないという事でして…」
「トシさん意外だとこの村には、もうおらんかもしれませんなぁ…」
「この唄はいつ頃出来た歌なのでしょうか?」
「確か江戸の終わりじゃなかったかのぉ…。何年か前に資料を見たと思うんじゃが…」
「えっ、資料…?この手毬唄のですか?」
「うぅむ…あまりしっかり目を通してないから自信はないんですがのぅ…。確か何処かの小さな出版社が出した郷土誌に手毬唄の事が書いてあったと思うんじゃが…」