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不知夜月(いざよいづき)の夜に――
第2章 三日月
最寄り駅から10分弱のアパートに
独り暮らしを始めて2年


駅のそばの商店街には何でも揃っていて
途中にあるこのコーヒーショップに
立ち寄ることは殆んど無かった


街路樹の間から見える店構えは
いかにも女子が好みそうだった


付き合って間もない頃
君と一度だけ入ったね


君は珈琲が苦手で
紅茶を頼んだっけ…


そんな事を思い出しながら
店内を改めて見回すと


観葉植物が店のいたる処に置いてあり
洋楽のBGMが微かに聴こえ
間接照明が優しく店内を照らしている


芳ばしい珈琲の香りが
疲れた身体を癒してくれる感じがした


確かに
心まで穏やかになりそうだ


『もうすぐテーブルのランプに灯が灯るんですよ』


嬉しそうに彼女が教えてくれた


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