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不知夜月(いざよいづき)の夜に――
第3章 上弦の月
コーヒーや紅茶を飲んでは
その味や香りを堪能し
物思いにふける時の沈黙も
少しも苦にならない


時折ざわめく店内
決してその場の空気を邪魔しないBGM
静かに 時が過ぎて行く――


『もう7時ですね
私は そろそろ帰りますね』


『うん
じゃあまたね』


午後7時になれば
どちらともなく席を立ち
そして各々に帰路に着いた


あの日に出逢ってから
ひと月が過ぎていた


失恋した者同士付かず離れず
お互いを見守るように
ここに来ては別れる


そんな関係の僕達


携帯番号を聞く事も
メールのアドレスを聞く事も
家を聞く事も
職場を聞く事もしない


ただ
名前を知ってるだけ


年齢も知らないけど
多分同じ位なんだと思う



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