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すこし歪な愛の形
第1章 すこし歪な愛の形
「ちょっと待って、もしかしていっくん、あたしに怒ってるの?」
「怒って当たり前でしょ!」
するとちーちゃんはふるふる震えて、拳を握った。
「それは……こっちの台詞だって言ってるでしょうが!!」
かつてないくらい、ちーちゃんが怖い。怒鳴られると、何を言っても勝てる気がしない。
「う……ち、ちーちゃんの馬鹿ぁ!」
僕は気が付くと逃げ出していた。行くあてもないまま、部屋を飛び出した。
「逃げ出したいのは、こっちだよ……」
ちーちゃんの呟きは、僕の背中に届く前に、閉められた玄関のドアに遮られた。
どこをどう走ったかは分からない。周りに見られたら、みっともない男と思われるかもしれない。けれどまだ出勤には早い時間。犬の散歩をしてるような人とはすれ違ったかもしれないけど、誰かに白い目で見られた気はしなかった。
本当にこのまま別れなきゃいけないんだろうか。ちーちゃんはなんであそこまで怒ったんだろう?
「あ……」
答えは、ふと目に入ったコンビニの窓に張ってあった。