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すこし歪な愛の形
第1章 すこし歪な愛の形
しばらくちーちゃんのイラストを見ていると、扉の開く音がする。ちーちゃんが、帰ってきたんだ。
「ちーちゃん!」
飛び出そうとしたけれど、煙管を持ったままじゃ危ない。思い直して、ちーちゃんを待つ事にした。
「いっくん……それ」
ちーちゃんは部屋に入ると、僕の煙管を指差す。そういえばちーちゃんには、まだ見せてなかったっけ。
「これ、紋次郎とおそろい! 渋いいっくん、カッコイイでしょ」
「紋次郎って、いっくん見たの? あんな、つまらないの」
「つまらない? ちーちゃんの作るキャラに、つまらないイラストなんてある訳ないじゃん。僕はねー、これとこれとこの紋次郎が好きだな」
僕は散らばっていたちーちゃんのイラストを広げて、ちーちゃんに説明する。
「このイラストの紋次郎はね、目がカッコイイんだよ。こっちの方はゆるキャラっぽい輪郭で可愛いし、これは着てる和服の柄がクール」
ちーちゃんは何も言わず、ただイラストを見つめている。よかった、また喧嘩にならなくて。
「最初に描いた紋次郎も持ってるよ! これと比べると、紋次郎ってカッコイイ系に進化してるよね。男の子だからカッコイイ方がいいのかな?」