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すこし歪な愛の形
第1章 すこし歪な愛の形
僕が最初の紋次郎を出して見せると、ちーちゃんは他の紋次郎ごとそれを奪い取る。一枚一枚見つめるちーちゃんの目には、涙が滲んでいた。
「なんで人の話聞かないくせに、こんなの持ってるのよ……なんであたしが気合い入れたところ、全部分かっちゃうの……」
これはもしかして、また僕がダメ出しされているんだろうか。なんで持ってるとか言われても、答えは一つしかない。
「それは、ちーちゃんが好きだからだよ!」
ちーちゃんの頬に、涙が伝う。けれどちーちゃんはそれを拭うと、僕に紋次郎を返した。
「あたしはいっくんなんて嫌い。人の話聞かないし、浮気性だし、思いやりもないし」
「やっぱり……別れたいの?」
僕は慌ててコンビニの袋をちーちゃんに差し出す。これが、僕に出した最後の答えだ。
「これ、ゼリー。期間限定の、みかんたっぷりスペシャルゼリーだよ!」
ちーちゃんはゼリーを受け取ると、なぜか笑い出す。僕があっけに取られていると、ちーちゃんは僕の頭を叩いた。
「いっくんの馬鹿。やっぱり話聞いてない」
「え!? プリンでもヨーグルトでもないなら、ゼリーじゃないの!? ババロア? ブリュレ?」