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すこし歪な愛の形
第1章 すこし歪な愛の形
褒められて、祝ってもらって、今日は吹かした煙管の味が一段と美味しい。と、その瞬間、ポッケに入れてたスマホが着信を告げて震えた。
「あ、ちょっとごめんね」
画面には、ちーちゃんの名前。僕は慌てて立ち上がると、トイレに向かう。ちーちゃんは真面目だから、こういう場所が嫌いだ。通ってるのがバレたら、また鬼のように怒られる。しっかり誤魔化さなきゃと、心を引き締めた。
「えへへぇー、もしもし愛しのちーちゃん、僕いっくんだよぉ」
『……また、キャバクラにいるんだ』
速攻でバレた。なんで? ちーちゃんの洞察力は、名探偵より鋭いと思う。
『ね、今日は帰ってこないの? 寂しいよ、いっくん』
いつもなら怒り出すのに、今日のちーちゃんはなんだかしおらしい。しっかり者の女の子がたまに甘えてくると、ギャップにきゅんときちゃうよね。
「どうしたのちーちゃん、そんな事言われたら、抱きしめたくなっちゃうよ」
『抱きしめていいよ。いいから……今、いっくんと一緒にいたい』
可愛い事言ってるのに、ちーちゃんの声はやけに沈んでいる。どうしたんだろう? なんか、変だ。