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すこし歪な愛の形
第1章 すこし歪な愛の形
ミワちゃんは病気の時にうるさくされたら嫌だと言うから、アパートのドアは静かに開ける。
「ちーちゃん、ただいまー」
履き潰したスニーカーは、簡単に脱いでしまえる。足音を立てないよう部屋に入ると、ちーちゃんはテーブルに突っ伏していた。
「ちーちゃん、まさかずっとそこにいたの? 駄目だよ、ちゃんとベッドで寝てなきゃ」
テーブルの周りには、散らばる紙。パソコンはつけっぱなし。多分、仕事してたんだろう。僕にはよく分からない、お絵描きソフト用の道具も置いてある。
「……いっくんの、ばか」
顔を上げると、ちーちゃんは目を真っ赤にしながら僕を睨む。なんでちーちゃん怒ってるんだろう?
「ばかだなんて悪い言葉使っちゃ駄目って、親御さんに言われなかったの? おかえりも言わないでばかだなんて、ひどいよ」
「ひどいのはそっちだよ! 帰ってくるって言ったのに!」
ちーちゃんは立ち上がると、僕に詰め寄る。これはマジギレだ。ケンカなんてしたら、ちーちゃん風邪が悪化するじゃん。困るなぁ。
「だから、急いで帰ってきたよ? プリンとヨーグルトはどっちがいいか分からなかったから、両方買ってきた」