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しゃぼん玉色した彼
第3章 奇妙な同居生活
仕事中も気になるのは、玲於の事。
気持ちを何度も切り替えようとしたけど、今日は本当に仕事にならないかもしれない。
プライベートと仕事を混合するなんて、これじゃ部下に何も言えない。
今日はもう、残ったとしても終わる気がしない。
それなら、さっさと帰って玲於の様子でも確認しよう。
いなくなったならそれでいいじゃないか。
いたとしたら、きちんと連絡先を聞いておこう。
私は定時の時刻が近付くと、帰る準備を着々と進めていく。
大きな企画を担当していたらこうもいかない。
暇な期間で本当によかった。
定時になって私はすぐに立ち上がると、お疲れ様と言ってオフィスから出ようとした。
周りはまだ仕事をしていたから、早々に帰宅する私に少し驚いていた。
こんな事、滅多にないし。
いや、初めてかも。
「下野主任、もう帰るんですか?」
そう声をかけてきたのは、前から歩いて来た逢坂くんだ。
その腕の中にはたくさんの書類。
「お疲れ。うん。今日は家に早く帰ろうかと思って」
「へえ。何かあるんですか」
「あ、いや、……は、母親が。母親が家に来てるのよ」
咄嗟にそう嘘を吐くと、彼は「なるほど」と小さく唸る。