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あなたが教えてくれたこと
第6章 6
彼の言う通りになった。

遼平なら自分を本当に救ってくれる。
そう信じるほど夢見る力は強くないが、彼を信頼し、より強く惹かれるには充分な出来事となった。

昨夜の歪な情熱など微塵も感じられないほど、今朝の正嗣は妻に無関心だった。
相変わらず何時に戻るなどと一切告げずに出社していく。

父親がいると緊張した様子の智哉もきびきびとした様子で登校していった。

朝の仕事を終えた紫遠はすぐさま自室に戻り、スマートフォンを手にする。

『今日のお昼、逢えませんでしょうか?』

短いメッセージを遼平に送った。
あまりにも簡素な理由は『話したいことがあります』とか『赦して下さい』などという言葉を書いては消し、結局残ったのはその短い一行だけだったからだ。

そんな僅かな一行のメッセージを送るのに十分以上時間を費やし、スマートフォンのカバーはいつの間にか汗で濡れて滑りそうになっていた。
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