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あなたが教えてくれたこと
第6章 6
意識散漫な状態で鏡を見た瞬間、紫遠は思わず息を飲んだ。
鏡に映る己の顔が一瞬だけ他人に見え、小さな悲鳴を上げかける。

悩んでいるようで、苦しんでいるようで、うっすらと笑った顔。
それは見たこともないほど、艶っぽい女の顔だった。

もちろんそんな女はすぐに鏡から消え、薄暗い目を見開いた自分の顔だけが映っている。
恐る恐る笑ってみても、そこに映るのは不器用で見苦しく痛々しい女の顔だけであった。


十二時ちょうどに彼の部屋のインターフォンを押すと扉は唐突に開く。扉の向こうで立って待っていたとしか思えない反応の早さだった。

「きゃっ!?」

肩を抱かれて部屋に引き込まれ、文字通り息をする間も与えられず唇を塞がれる。
視覚も追いつかないほどの出来事で、嗅覚が最初に遼平を感じることが出来た。
次に彼を感じたのは、荒々しく求めてくる唇の動きだった。
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