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あなたが教えてくれたこと
第6章 6
どんな顔をして遼平と向き合えばいいんだろう、そんなことで悩んでいた自分が恥ずかしくなるほど、青年の思いや行動はまっすぐだった。

紫遠は自分を恥じながら自らも遼平の唇を食んでいく。

「逢いたかった」

頬を両手で挟んで、彼が囁く。

「……私も、です」

遼平の熱い想いに触れ、誤魔化すことも躊躇うこともなくなった。
はじめて結ばれて以来、二人きりで顔を合わせるのははじめてである。もちろん家庭教師としては何度か会っているが、紫遠は白々しいほどに他人行儀を貫いていた。
正直『一度きりの過ち』で済ませてしまおうとしていた。自分の気持ちにだけ蓋を閉めてしまえばいい。それで全てが収まるのであれば。
そうやって逃げるつもりだった。

しかし心はそんな合理的に出来ていない。
彼を見て、彼の香りを嗅ぎ、彼に触れられ、気持ちを抑えられるほど紫遠は強い人間ではなかった。

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