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あなたが教えてくれたこと
第6章 6
彼の腕が背中に絡みつき、腰が寄り添う。
夢中で交わすキスは、顔にかかる乱れた髪さえも気にせずに湿らせてしまっていた。

彼の手のひらに胸が覆われたとき、慌てて顔を離す。

「待ってっ……」

このまま勢いで愛を身体で語ってしまう訳にはいかなかった。

「昨夜、主人が出張から帰ってきて」
「聞きたくない。言わないで」

言葉を封じるように遼平は唇を寄せてくる。

「駄目。聞いて」

紫遠の切羽詰まった声に遼平は動きを止めざるを得なかった。
正嗣が昨夜出張から帰ってくるということは、昨日家庭教師できた時に伝えてあった。
それを聞いたときの彼の悲しげで諦めたような顔は、恐らく生涯忘れることが出来ない。

「昨日、あの人に身体を弄ばれました……ごめんなさい」
「謝ることじゃない。あなたと旦那さんは、夫婦なんだから」

本心じゃないことは隠す気もないほどにふて腐れた声だった。不謹慎ながらもそんな未成熟な遼平を可愛いと感じてしまう。
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