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あなたが教えてくれたこと
第6章 6
「そんなことを俺に聞かせてどうなるっていうの? 今さら夫がいるから諦めろとでも? 俺は紫遠さんが好きで、紫遠さんだって」
「ちゃんと最後まで聞いて」
「いや、聞かない。旦那さんが帰ってくると聞いて昨日は一睡も出来なかった。あなたが好きで、それなのに何も出来なくて。俺がどれだけ苦しかっ」

キスをしたのは遼平の口を塞ぎたかったからだけじゃない。苦しめたことのお詫び、それ以上に彼が愛しかったからだった。

「私、夫に玩具にされながら……あなたに申し訳ないと謝りながら……感じてしまったの……」

遼平の力が抜けるのを感じた。支えがなくなって紫遠もよろけてしまう。
その勢いで二人は床に倒れてしまった。

「ごめんなさい……はしたない女で」
「イッ…………たんですか?」

美しい灰色の瞳が揺れていた。紫遠はその目を見詰めながら静かに頷いた。

「イキました……何度も、何度も……数え切れないほど……」

紫遠の涙が堰を切ったとき、遼平の瞳からも大粒の滴が流れ落ちた。
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