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あなたが教えてくれたこと
第8章 8
これまで痛いとか辛いと感じることはあっても、嫌悪感を覚えることはなかった。
しかしその夜は違った。

夫の指が、息が、舌が、胯間が、穢らわしかった。

『遼平さんっ……』
彼に弄ばれる間、ずっと遼平のことを想い、仕打ちに耐えていた。

顔に吐き出された正嗣の精が熱を失い、つつーっと流れ落ちていく。

『ごめんなさい、遼平さんっ……ごめんなさいっ……』

それが涙と混ざっていく。
穢れを拭いたかったが、身体が動かなかった。
死にたいくらいの屈辱なのに、下腹部は忌み深く疼き、火照っている。

『悔しい……こんな身体、捨てたいっ……』

唇を噛んで声を殺し、泣いた。
正嗣はもう部屋におらず、声を出したところで聞こえはしない。それでも紫遠は喉の奥を絞って嗚咽した。

せめて感じないことで遼平への操を立てるつもりだった。しかし紫遠の身体を遊び尽くした正嗣には敵わなかった。
何度も深く、身体を灼かれて気が解き放たれてしまったのだった。
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