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あなたが教えてくれたこと
第8章 8
今夜のことは忘れよう。
そう割り切ろうとしたが、無理だった。
たとえ今夜をなかったことにしても、あと何夜、自分は『なかった夜』を作らねばならないのだろう。


「紫遠って学生の頃、どんな感じだったの?」

昨夜のことなど知るよしもない遼平は何の躊躇いもなく無垢な微笑みをくれる。

「どうって……地味な感じですよ。どこにでもいるような」

愛する人に軽蔑されたくなくて、紫遠もいつも通り自然を装った。
何度も愛を交わした遼平の部屋には、いつもと変わらぬ親密な空気が漂っている。

「遼平さんこそ、遊んでそう。すごいモテそうだし」
「はあ? そんなわけないし。高校までは男子校だったし」
「でも今はモテるんでしょ。かっこいいし、優しいし」

少し言葉に刺があった。それに敏感に気付いた彼は眉をしかめる。

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