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あなたが教えてくれたこと
第2章 2
「えっ!?」

言葉の意味よりもまず、『紫遠さん』と呼ばれたことに驚いてしまった。
いきなり肩に手を回されたような、迷惑と戸惑いを覚えてしまう。

「あ、すいません。紫遠さんは失礼でしたね」
「いえ……いいんですよ、別に」

自分を『遼平』と呼ばせようとするくらいの感覚なら、相手もファーストネームで呼ぶのだろう。そう解釈するも、むず痒かった。

その後も智哉は母の失態を挙げ、赤面しながら息子を窘める展開が繰り返された。
こんなに笑いが絶えない夕食はいつ以来だろう。
目の端に溜まった笑い涙を拭いながら、紫遠は記憶の蔓を手繰っていた。


ーーーー
ーー
遼平がやって来るのは月曜と水曜と金曜だった。
これまで家庭教師がやってくる日を苦痛にしていた智哉が、愉しみにしているのには驚かされた。
息子の喜ぶ姿を見るのが嬉しくて、紫遠もいつしか月水金を心待ちにしていた。
そして十三歳も歳下だが、不思議と人を惹きつける遼平に尊敬の念すら抱いていた。
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