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あなたが教えてくれたこと
第2章 2
しかし夫の正嗣にとっては家庭教師の人となりなど関心ない。彼にとって大切なことは息子の成績が上がること。そのただ一点だ。

しかしその点についても問題はなかった。
元々成績は優秀な智哉だったが、引っかけ問題などには弱い。遼平はそのことにすぐ気付き、智哉に疑って問題を読ませる力をつけてくれた。
お陰で成績は上がり、正嗣も彼に任せてみる気になっていた。


「今度の家庭教師はなかなかいいみたいだな」

背中に両手を回され、手首を縛られた格好の紫遠も、その言葉を聞いて安堵した。
しかしことさら遼平を褒めることはしない。
疑り深く、嫉妬深い正嗣にあらぬ嫌疑をもたれてしまうからだ。
裏切った人間には容赦がない彼の性格はよく知っている。
たとえそれが誤解であっても取り返しのつかない仕打ちが待っているに違いなかった。

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