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あなたが教えてくれたこと
第2章 2
紫遠の方もそれに順応していったのは言うまでもない。

「尻が痛いか?」

腫れた臀部を撫でながら、今さら慈悲の声を掛けてくる。

「はい。ジンジンと痺れます」
「それは可哀想に」

正嗣の声色には思い遣る気配など微塵もなく、むしろ笑いを噛み殺した響きがあった。

「じゃあこれを塗ってやろう」

そう言って茶色の小瓶を取り出す。

「それはっ……」

彼が手にしていたのはハッカ油だった。
ただでさえ強烈な刺激をもたらすものをそんなところに塗られたら正気を保てる自信すらない。

「それだけはっ……」
「お前はいつも『それだけはっ』って言うな。それだけそれだけって、聞いていたらきりがない」

怯えれば悦ばせるだけと知りながらも、たじろがずにはいられなかった。
両手が縛られていると立ち上がるのも難しい。
身体を引き摺りながら間合いを取るが、逃げられるわけがなかった。
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