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あなたが教えてくれたこと
第2章 2
「おはよう、智哉」

笑顔があまりにもぎこちなかったが、それでも彼女は母親の顔を貫いた。
智哉に目を逸らされ、紫遠の心は更に痛む。
しかしそれに気付かない鈍感な振りで明るく振る舞った。唯一の救いである息子との時間を守るために。

智哉が登校しても後片付け、洗濯、義父の世話、買い物、掃除とやることは途切れることがない。
正気を逸脱するほど快楽で塗りつぶされた昨夜のダメージを癒やす時間などまるでなかった。
そこまで紫遠を弄んだ夫だが、そこに愛は感じなかった。喩えるなら玩具を乱暴に扱う子供に似ている。
好き放題無茶苦茶にし、その反応を愉しむような残忍さだ。

洗濯物を取り込んでいると早くも智哉が帰宅する。おやつを出し、取り込んだ洗濯物を畳んでいる最中に家庭教師の遼平がやって来た。
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