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あなたが教えてくれたこと
第2章 2
「いつもお世話になっております」

玄関で頭を下げると遼平はじっと紫遠の顔を見詰めてきた。

「どうかされましたか?」
「あ、いや……だいぶお疲れの様子なんで」
「えっ……」
「無理をなされてるんですか?」

真っ直ぐに見詰められ、紫遠は返事に窮した。

「お身体には気を付けて下さいね」

さらりと一言だけ言うといつもの笑顔に戻り息子の部屋へと向かっていった。
不意にかけられた労いの言葉に、彼女は鼓動を速めてしまっていた。

『やっぱり、あの人は……なんか変わってて苦手』

胸の動悸は好意的なものではないと戒めるように胸中で呟く。
下腹部の熱は先程よりも増してしまっていたが、それには気付かない振りをした。
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