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あなたが教えてくれたこと
第3章 3
今日は息子の家庭教師が来る日であるし、食事の準備の他、洗濯物の取り入れも終えていない。
しかし義父の赦しが与えられるまでマッサージは続けなくてはならない。

いちいち嫁に身体を解させなくともプロの指圧師を呼べばいいのだが、時おり彼はこうして嫁を使う。それは義母が亡くなってから頻度が増していた。

親指を腰骨の少し上に当てて体重をかけようとしたとき、冨士雄の手が紫遠のふくらはぎを掴んだ。

思わず声が出そうになって、慌てて咽を締めてそれを殺す。
近頃マッサージをさせている最中、頻繁にこういうことはあった。
「やめてください」とは、言えなかった。この家に嫁いでから紫遠は徹底的に自分を殺すことを強要されてきた。
その結果、拒絶することや抵抗することが出来なくなってしまっていた。

こういう時は身体を動かしたり、立ち上がったりしてその手から静かに逃げることだけが、唯一の対抗策だった。
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