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あなたが教えてくれたこと
第3章 3
トイレットペーパーで陰唇を拭った瞬間、涙がこみ上げてきた。
これまで義父母には数々の仕打ちや辱めを受けてきたが、今日ほど惨めに感じた時はなかった。
それは恐らく直後に美しい青年を見たからだろう。
逃れられない鳥籠に閉じ込められて歳を重ねてしまった自分と、自由に青春を謳歌しているであろう遼平のコントラストが、必要以上に自分を卑小で醜いものに見せてしまった。

トイレの中で、声を漏らさずに泣く。
零しても零しても、なかなか涙は止まらなかった。
これほど涙を落としたのは嫁いできた頃以来だった。

家のために嫁ぎ、それになんの疑いも挟まずに暮らしてきたつもりである。
しかしそれは結局『つもり』でしかなかった。

学生時代の友達とは今でも連絡を取り合っている。
夫の稼ぎが少ないだとか、この歳で未だ独身だとか嘆いているが、紫遠は正直彼女たちが羨ましかった。
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