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あなたが教えてくれたこと
第3章 3
幸せだとか不幸とかではなく、彼女たちは『人として』きちんと生きている。
自分はこの家に飼われているだけだ。
自由もなく、権利もなく、家事をし、年老いた義父母の世話をし、夜は玩具にされるだけの生活。
だからといってこの家を飛び出すことも出来ない。
この歳までアルバイトすらしたことがない紫遠が子供を一人抱えて生きていけるとはとても思えなかった。

自分の身の程を改めて思い知らされたところで、なさねばならない日常に戻る。
夕食を作り、風呂を沸かし、こまめに掃除をした。
やることがあれば、人はなんとか平常心を保てるものだ。

鏡を見ると、泣いた跡もすっかり消えている。
平然とした顔で義父に夕飯を知らせることだって出来た。

相変わらず彼は自室で摂ることを望んだ。
思えば冨士雄は遼平が来ている日は一緒に食事をしたことがなかった。
人嫌いというより、家庭教師ごときと同席する必要はないというのが理由だろう。

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