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あなたが教えてくれたこと
第3章 3
遼平が帰ってからも心の乱れは治まらなかった。
いつも安らぎや癒やしを与えてくれる彼が、急に心を乱す悪魔に思えてくる。
魅惑的で、人の心を見透かす、悪魔。

夫からの連絡はなかった。
恐らく今夜は帰ってこないだろうと、これまでの経験で確信する。
外の女のところに行ってるのか、出張に行ってるのか、接待に行ってるのかは分からないが、帰宅しないのは間違いなかった。

風呂上がりの髪をタオルで乾かしながら窓を開ける。
秋の夜風が吹いてきて、鬱積したいろいろな感情を流してくれる気がした。
部屋の灯りを消してから、少しだけ軽くなった心で夜空を見上げる。
星座のことなどなんの知識もないが、その美しさが充分に愉しませてくれた。
しかし彼女にはその美しさについて語り合う相手がいなかった。

一緒にこの空を眺めたい相手を想うと、何故かあの十歳も歳下の家庭教師の顔が浮かんでしまう。

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