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あなたが教えてくれたこと
第4章 4

「すいません、あの」
ガーゼを施した紫遠の顔を見た遼平は、驚きで目を見開いた。
紫遠は気付かない振りで惚け、困った顔で笑う。
「昨日息子と夫がゲームのことで喧嘩して部屋から出てこないんです」
ことさら何でもない、些細なことのように告げる。
遼平の錫色の瞳は紫遠の頬に向けられて動かなかった。
「紫遠さん、殴られたんですか?」
遼平の声は震えていた。憎悪と怒りを必死に抑えつけようとし、上手くいかない声だった。
話の流れからも隠すことは難しい。大切なのは鬱ぎ込んだ智哉を癒やすことだ。
「殴られたなんてひどのことじゃないんです。ちょっと叱られただけですよ」
笑って流そうとすると、彼が殴られたように顔を歪めて目を背けた。
「警察に言いましょう。たとえ夫婦であっても暴力は赦されません」
「そんな大袈裟なっ……夫婦喧嘩なんてどこの家庭でもあります。それをいちいちお巡りさんに言ってたら、お巡りさんが気の毒だわ」
笑い話にすり替えようとするのには無理があった。
ガーゼを施した紫遠の顔を見た遼平は、驚きで目を見開いた。
紫遠は気付かない振りで惚け、困った顔で笑う。
「昨日息子と夫がゲームのことで喧嘩して部屋から出てこないんです」
ことさら何でもない、些細なことのように告げる。
遼平の錫色の瞳は紫遠の頬に向けられて動かなかった。
「紫遠さん、殴られたんですか?」
遼平の声は震えていた。憎悪と怒りを必死に抑えつけようとし、上手くいかない声だった。
話の流れからも隠すことは難しい。大切なのは鬱ぎ込んだ智哉を癒やすことだ。
「殴られたなんてひどのことじゃないんです。ちょっと叱られただけですよ」
笑って流そうとすると、彼が殴られたように顔を歪めて目を背けた。
「警察に言いましょう。たとえ夫婦であっても暴力は赦されません」
「そんな大袈裟なっ……夫婦喧嘩なんてどこの家庭でもあります。それをいちいちお巡りさんに言ってたら、お巡りさんが気の毒だわ」
笑い話にすり替えようとするのには無理があった。

