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あなたが教えてくれたこと
第5章 5
「たす、助けてっ……」
大声さえ出なかった。
悔しくて、怖ろしくて涙が零れる。
その時脳裏に浮かんだのは夫でもなく、息子でもなく、何故か遼平だった。
「大人しくしていれば悪いようにはせん」
覆い被さった義父は老人とは思えぬ力で抑えつけ、唇を狙って顔を寄せてきた。
「んんーっ!!」
慌ててよけるが、ズレた位置で唇が重なってしまう。
ヌメッとした気色の悪い感触がした。
義父の醜い汚れた舌に唇を舐められていた。
顎、頬、鼻と、ナメクジのような感触が這っていく。
「い、嫌ぁああっ!!」
紫遠は叫びながら額を義父に叩きつけた。
ぶほっという呻きと共に、赤黒い血が飛び散る。
たまたま運良く、彼女の頭突きが冨士雄の鼻頭を捉えていた。
いくら力に勝る彼でも、鼻を撲たれては防ぎようがなかった。
鼻を抑えて転がる隙に紫遠は立ち上がる。そして考えるより前に、ひたすら逃げた。
浴びた血もそのままに、適当な靴を引っ掛けるように履いて、外に飛び出していた。
大声さえ出なかった。
悔しくて、怖ろしくて涙が零れる。
その時脳裏に浮かんだのは夫でもなく、息子でもなく、何故か遼平だった。
「大人しくしていれば悪いようにはせん」
覆い被さった義父は老人とは思えぬ力で抑えつけ、唇を狙って顔を寄せてきた。
「んんーっ!!」
慌ててよけるが、ズレた位置で唇が重なってしまう。
ヌメッとした気色の悪い感触がした。
義父の醜い汚れた舌に唇を舐められていた。
顎、頬、鼻と、ナメクジのような感触が這っていく。
「い、嫌ぁああっ!!」
紫遠は叫びながら額を義父に叩きつけた。
ぶほっという呻きと共に、赤黒い血が飛び散る。
たまたま運良く、彼女の頭突きが冨士雄の鼻頭を捉えていた。
いくら力に勝る彼でも、鼻を撲たれては防ぎようがなかった。
鼻を抑えて転がる隙に紫遠は立ち上がる。そして考えるより前に、ひたすら逃げた。
浴びた血もそのままに、適当な靴を引っ掛けるように履いて、外に飛び出していた。