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あなたが教えてくれたこと
第5章 5
「私、わたしっ……」

鼻の奥が痛いほどツンとした。

「紫遠さん……」

肩を抱かれ、彼の胸に顔を埋めた。
涙が恐怖から安堵のものへと変わる。

「もう、大丈夫です。安心して下さい」

何があったかは訊かず、強く抱き締めてくれるのが嬉しかった。
見た目よりもずっとがっしりした彼の身体も頼もしく、紫遠は言葉にならない声を漏らしてただ頷いていた。

落ち着きを取り戻せたのは五分後だった。彼の腕の中に蹲っているのが急に照れ臭くなる。けれどもう少しだけ遼平の体温を感じていたかった。
恐怖のあとに全力で駆け、安堵に包まれ、脳も身体も疲れてきっていた。

「…………ごめんなさい」

謝りながらゆっくりと彼の腕から身を離す。
遼平は何も言わずに微笑み、『どういたしまして』というように首を小さく振った。

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