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あなたが教えてくれたこと
第6章 6
「お前も淫乱になったものだな。嫁いできたときは男を知らない無垢な身体だったのに」
「ええ……全てあなたに教えて貰いました」
「可愛いことを言うな。じゃあ『あの部屋』で待っていろ」
「そんなっ……お疲れなのでは……」
「抱きたくなった」
「……はい」

脱衣所から出た紫遠は目眩でよろめき、壁に手を突きながら動悸を鎮める。
正嗣の鋭さは恐るべきものであったし、もし躊躇いなどを見せたら執拗なまでに疑われ、秘密は曝かれていたかもしれない。

『これでよかったんだ……だって私は……あの人の妻なんですもの』

振り払いたいのに遼平の姿はより一層脳裏に浮かんだ。
恋することを覚え、愛しい人以外に抱かれるのは、たとえ夫だとしても堪え難い苦しみとなる。
こんな気持ちを植え付けた遼平に逆恨みし、そして心から詫びた。

『ごめんなさい、遼平さん……あの人に、抱かれます』

紫遠は覚束ない足取りで地下の夫婦の営みの部屋へと向かっていった。
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