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第3章 報酬と楽穴
「...は?」

その一言が出てくるまでに随分の時間を要した。

そのぐらい彼女の言っている言葉を理解するのに時間がかかった。

いや、理解は出来ずに、思わず聞き返したのだ。

「...えっと、だから~」

「いや。聞こえてんだけど。そうじゃなくてさ」

落としそうになるグラスを、少し強めにテーブルに置いた。

「マジで言ってんの?」

なんだか高そうな、およそ学生が来そうにないbarに驕るからと呼出されて。
なんか相談事かなとは思っていたけど。

爆弾発言をした本人は、膝の上の大きめのカバンをぎゅううっと握りしめ頷いている。

暗がりでよく分からないが、真っ赤な顔をしてるに違いない。
本人も大それたことを頼んでいるという自覚はあるらしい。

「ちょっとまって。マミちゃんだっけ」

「マナミ」

「ごめん、マナミちゃんね」

ッてゆーか、名前もハッキリ知らないし。

「マナミちゃんって、俺のこと好きだっけ?」

その言葉に、今度は首を大きく横に振る。

そこまで否定しなくても。傷つくし。

「...だよな。アイツが好きなんでしょ。ほら、えーっと...」

「シュウトくん」

そうそう。
明らかに頭が悪そうなキラキラした名前付いたヤツ。
親も元サッカー選手をかじってただか、目指してたかで、そんな名前付けられて。
どこかのユースに、ほんの小さい頃ちょろっとだけ居たことがあって。
うちのサークルじゃあ、まあ一応一番上手くて。
女が集ってるヤツな。
ってか、サークルの女のコの半数は、ヤツの目当てらしい。

あー、思い出した。
何週間か前、女のコ達が
「シュウトくんは処女嫌いらしーよ!」とかって、ぎゃーぎゃー騒いでたのがたまたま耳に入って、テキトウなこと言ってしまった。
あの時の中心の子か!このマナミちゃんは。

って、ことは今はまだ“処女”で、今俺をホテルへ誘って...と。

「今自分が何頼んでるか、本当に意味わかって言ってんだよね?スゲーぶっとんだ事言ってんだけど」

今度はまた縦に首を振っている。

「あの後ね、シュウトくんに聞いたら、その...じゃなかったら、付き合ってもいーよって言ってくれてて」

そういや、なんか他校の彼女と別れてどーのって騒いでたな。

しかし、ぜってー違うだろ、それ。
『付き合う』じゃなくて『突き合う』ほーだろ。
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