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調教ごっこ
第1章 悠香の秘密

 更新が止まったと言っても、悠香は決して放置しているわけではなかった。
毎日のようにパソコンを開き、ストーリーの続きを考えるのだが、どうしても筆が進まなかった。
パソコンを見つめたまま数時間ということも少なくなかった。
人気作品ゆえに「更新まだ-?」的なレビューが連日寄せられた。
悠香は「必ず完結させます」と返事をするが、先は見えぬまま。
イライラとプレッシャーから悠香はタバコを吸うようになる。
それでも筆が進まない。

 そして運命の金曜日。
涼しい秋風が吹く夜、悠香はパソコンを開いたままお風呂へ向かった。
三十分ほど湯に浸かり、寝間着に着替え部屋に戻ると悠樹がパソコンの前でタバコをふかしていた。

 悠香がタバコを吸うようになってから、悠樹もちょくちょく部屋を訪れタバコを無心するようになっていた。
最初は怒っていた悠香だが、弟も年頃。
この部屋以外では吸わないことを条件に黙認していた。

 「ちょっとユウ君……パパに見つかると怒られるわよ」
 「うっせーな。約束通り姉ちゃんの部屋でしか吸ってねーから。つーか、メンソールやめてくんね?」

 あきれ顔の悠香にかまわず、悠樹はモクモクと白い煙を吐き出している。

「つーかさ、これ姉ちゃんが書いてんの?」
「え?なにを?」
「いや、被虐の放課後ってエロい小説……」 
 悠樹の視線の先には煌々と輝くパソコンの画面。
そこには『かなり大人の官能小説』作者メニューのページが開かれていた。

 「きゃーっ────」

 悠香は悲鳴をあげ、慌ててパソコンを奪いベッドに座りこんだ。

 「か、か、勝手に見ないでよ!知らない知らない───」

 悠香は真っ赤な顔で知らぬ存ぜぬを通したが、時すでに遅し。
悠樹は悠香の秘密を知ってしまった。




 

 
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