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サイトの人
第19章 旅行
「それでは、ごゆっくり」
中居さんが部屋を出ると、静かな沈黙が漂う。
でも、嫌いじゃない。
チヨは出された茶菓子を平らげると、部屋の窓を開けた。
山間部にあるだけあって、真夏だというのに爽やかな風が部屋を包む。
食事の時間まではかなりある。
山間のその旅館は静かに近くで流れる川のせせらぎが響くだけで、温泉街のような華やぎはないぶん、落ち着いていられた。
部屋からの景色を楽しみ、日頃の生活から癒しを求める人を目的にした小さな旅館は、裏を返せば外に出てもやることはない。
のんびりと森林浴をしながら目に、体に自然本来の姿を映すだけなのだろう。
テレビだって、いつもよりも映るチャンネルも少ない。
外出する気配もないタカダを、チヨはなんとなくそわそわするように見つめる。
「んん?」
あぐらをかきながら、お茶をすするタカダと目があった。
「のんびり、ですけど。やることないですね」
「日々の喧騒を忘れさせてくれるでしょ?」
タカダはそののんびりを楽しんでいるけれど。
普段雑多な騒音にまみれたチヨは、途端に手持ち無沙汰になってしまった。
「あの、せっかくだから、ご飯の前にお風呂、入りません?」
「そう?俺はまだいいから。ここ大浴場も景色いいらしいし。楽しんでおいで」
なんだか肩透かしを食らったような気分になり、チヨは浴衣とタオルを持つと、タカダの言われるがままに、部屋の露天風呂ではなく大浴場に向かった。
中居さんが部屋を出ると、静かな沈黙が漂う。
でも、嫌いじゃない。
チヨは出された茶菓子を平らげると、部屋の窓を開けた。
山間部にあるだけあって、真夏だというのに爽やかな風が部屋を包む。
食事の時間まではかなりある。
山間のその旅館は静かに近くで流れる川のせせらぎが響くだけで、温泉街のような華やぎはないぶん、落ち着いていられた。
部屋からの景色を楽しみ、日頃の生活から癒しを求める人を目的にした小さな旅館は、裏を返せば外に出てもやることはない。
のんびりと森林浴をしながら目に、体に自然本来の姿を映すだけなのだろう。
テレビだって、いつもよりも映るチャンネルも少ない。
外出する気配もないタカダを、チヨはなんとなくそわそわするように見つめる。
「んん?」
あぐらをかきながら、お茶をすするタカダと目があった。
「のんびり、ですけど。やることないですね」
「日々の喧騒を忘れさせてくれるでしょ?」
タカダはそののんびりを楽しんでいるけれど。
普段雑多な騒音にまみれたチヨは、途端に手持ち無沙汰になってしまった。
「あの、せっかくだから、ご飯の前にお風呂、入りません?」
「そう?俺はまだいいから。ここ大浴場も景色いいらしいし。楽しんでおいで」
なんだか肩透かしを食らったような気分になり、チヨは浴衣とタオルを持つと、タカダの言われるがままに、部屋の露天風呂ではなく大浴場に向かった。