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第25章 迷路
「せっかくだし、呼ぼうか?」

「え?」

「鉄は熱いうちに打たないと。大丈夫だよ、こないだみたいなことはないから」

「やだっ、待って!」

必死にスマホを操作しようとするタカダの手を止める。

「ちーちゃん」

呼ばれてタカダを見ると、その視線は前方に向けられていた。

「あっ…」

興味深げなタクシーの運転手とミラー越しに目が合う。

タカダはチヨが黙ったのをいいことに、耳元で囁いた。



「ね、何がだめなの?教えて?」

「だって、こないだみたいに…」

「こないだって?」

運転手は運転に集中しながらも二人の会話に耳をそば立て、ゆっくりとラブホテルへの道を走らせている。
ホテルまで、とタカダが伝えた時ですら恥ずかしかったのに。
明らかにこんな会話、普通じゃない。

チヨはなんと答えていいかわからずに、じっと黙り込んだ。

タカダはそれを了解とみなしたのか、スマホに文字を打ち込み始めた。



「着きましたよ」

運転手が声をかけるまで、チヨは震えながらタカダの手を握りしめていた。
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