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霞草
第8章 別離
きっかけもなく、何日か経って、突然花屋から霞草の注文が入る。
僕が手伝うようになって、欲しい時に配達してもらえると重宝がられているのだ。
おじさん達への感謝も込めて喜んで引き受けた。
おじさんと刈り取りから手伝って午前中に配達する。
「坊主、花屋の連中にも挨拶してくれ、『特急便はこれで最後だ』って」
「わかりました。」
「あとせっかくだから、のんびり帰っておいで、あんな街でもゆっくり見納めしてやってくれ。」
「ありがとうございます。」
僕はおじさんの心配りに頭を下げた。
バスに乗り、街に下りる。たぶん次に乗るときは、別離のときだ。
車窓の景色も見納めだろう。
街の花屋を回る、
「ご注文の霞草をお持ちしました。」
「あっ、霞ちゃんの兄ちゃんね〜」
どの店でも言われる。
「短い間でしたが、僕の配達はこれで最後です。平日の特急便も最後です。お世話になりました。」
一軒一軒お礼を言う。
「そうか残念だね。急に切らしたとき助かったよ。
これからは霞ちゃんだけだね。霞ちゃんの兄ちゃん。」
「はい、今後も霞草の注文よろしくお願いします。」