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夢…獏の喰わぬ夢
第1章 春
後から気付いたが、彼女が大事にしている夢の世界への時間、
つまり、午後の講義の時間分、彼女は、眠らず僕とのお喋りに付き合ってくれていた。
夕方になり、さすがに、外でごろっとし続けるのには寒かった。
彼女の方から
「眠くなっちゃった。そろそろ帰ろっか」
と切り出された。
どうしてよいかわからない僕にはちょうどよい言葉で、
「そうだね。ところで、君の家何処?」
学校から僕の駅の一つ手前の駅だった。
「送ろうか?」
「大丈夫。まだ明るいし、」
彼女は僕を電車から下ろすチャンスもくれないまま、一人ホームに立って、
「今日は、サボらせちゃったね。ごめんね、ありがと。」
と、
そんなことない、…、ドアが閉まり、声にならなかった。