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夢…獏の喰わぬ夢
第1章 春
「次の講義は、さぼっても大丈夫よ。突然、出欠とったりしないし、あの人、学生が自分の講義聴いてるかなんて興味ないのよ」
「何で知ってるの?」
僕と同じように、友人やサークルの先輩などの情報源を持たない彼女が、僕の知らないことを知ってるのは不思議だった。
「解るのよ」
その返事もまた不思議だった。
謎だらけなのに疲れたのか、遠慮も警戒心も消えてしまったのか、僕は芝生にごろっとなった。
すると、驚くことに彼女も隣にごろっとなった。
「雲みたいね。私達…
確かにあるはずなのに、形も定まらず、流されている。
無いようでいて、光を遮り、雨をもたらす。」
もう気負うこともなく
「そうだね。全くその通りだ。」
素直に彼女の言葉に応えた。
しばらく、その時の僕には意味のない話が続いた。
たぶん、彼女を知るには、とても重要な話だったのかもしれないのだが、
僕は、彼女が、何故、眠り続けるかより、
彼女が、何故、僕に近づいてきたのか?
果たして、彼女は、近づいてきたのだろうか?
僕は、彼女をどうしたいのか?
…そればかりが、ぐるぐるしていて、その答えを、聞く準備も出来ていない僕は、ウワノソラで生返事をしていた。