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夢…獏の喰わぬ夢
第7章 現在
「ありがとう。」
彼女はほっとしたようだった。
急に今のうちに訊いておかなければ、と焦り出して、唐突に話した。
「僕とで良かったのかな。
僕なんかで、僕は君の気持ちも何も知らないまま、強引だったかな。」
彼女は料理を頬張りながら言った。
たぶん僕が深刻になりすぎたから、
わざと、そんなふうに答えたんだ。
「今の私は蝶じゃないわ。
人が気づかないほど弱い空気の流れに押されてヒラヒラしちゃうんじゃないわ。
雨で突然ここに来た時も、昨日も、今日も、自分の意志よ。心配しないで。」
茶化すような顔。
僕は自信なんてないからおとなしくしているんだ。
でも彼女が本心で僕を受け入れてくれているのは嬉しい。
「明日から僕は君に会う為に大学にいくよ。」
彼女が笑った。
楽しいひとときが終わってしまった。
皿洗いを一緒にやっても良かったし、帰る前にもう一度、夢でないことの確認をしても良かった。
でも彼女の言う通り、離れるのがつらくなってしまいそうだった。
「遅くならないうちに送るよ。君の連絡先教えてくれる?」
改めて順番が滅茶苦茶だなと思いながら訊いた。
「いいけど、電話や携帯持っていないのよ。必要ないし不便だわ。」
彼女らしい。