この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
夢…獏の喰わぬ夢
第9章 色
僕は泳いでいた。
水を手でかいて…
たぶん、川だろう。
とても気分がよかった。
しばらく、泳いでいて、自分が息継ぎもせず、ずっと水中に居続けているのに気付く。
とても優雅に、水に親しみ泳いでいた。
こんなに速く泳げただろうか、何故、水中で苦しくないのか。
水をかく自分の手は、緑色で、指の間には、水掻きがついている。
泳ぐのをやめて、足をみる。
同様に水掻きがついていた。
蛙か、河童か、水中に顔を映すものがないので、水面にでる。
息が苦しい。
急いで水面を見るが、川の流れが速く、水面は波立ち鏡の役目を果たさない。
息が続かない。
僕は、諦めて水中に戻る。
誰か他の生き物に出会いたくて、泳ぎ続ける。
川の流れは、激しかったのに、僕は難なく流れに逆らい上流へ向かう。
水中にいるのに、僕は、その中でさまざまな音を聴いた。
水の流れ、川底の石が動く音。
とても心地よい。
僕は自分が何者なのかは、どうでもよくなってきたが、一人は寂しく、誰かを求めて泳ぐ。