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夢…獏の喰わぬ夢
第9章 色
僕は絵の具の中にいた。
絵の具で溶いた色水か、光なのか、
よくわからないが、マーブルになった空間に仰向けのまま漂っていた。
浮いているようで、力を入れてもどうにもならないのを知って漂っていた。
すぐに夢だと自覚したが、何もないような不思議な感覚を楽しんでいた。
音も匂いもない視覚だけの世界…
自分の周りは無色透明だったんだと、光のように色が射し込んできて気付く。
肌に触れる色によって暖かみや冷たさ、痛さ、擽ったさがあったからだ。
今の夢の状態が何を意味するのかなど考えもせず、ただその視覚と感覚を楽しんでいた。
沢山の色んな色が僕に触れては離れていった。
心地よい開放された空間で、無になって、ただ漂っていた。
そして、どことなく、それをもたらしているのは彼女なんだと認識していた。
体中の力が抜けて、心底から癒された。
だんだんと寒色系の色が増え、寒さを感じるばかりになる。
「寒い…」
僕は呟いて瞳を閉じ、色の世界から暗闇にいく。
「はっ…寒い…」
「そうね、少し冷えてきたわ。」
自然に目が覚めて、彼女が僕を覗き込んで返事してきた。