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夢…獏の喰わぬ夢
第3章 春雨
そして、唇の震えを止める為に、
いや不思議なことに理由など考えずに、
自然に唇を重ねていた。
いつしか、部屋のほとんどを占めるベッドの上で、
2人で毛布にくるまって長い間キスしていた。
言葉を交わしたか?
夢の中で彼女と話した時と同じで直接頭の中で彼女の声を聴いたように思う。
毛布は、たぶん彼女が手繰り寄せたと思う。
かなり長い時間、時は止まっていたのではないか。
僕達はキスしていた。
唇が触れるだけのものから、重ね合わせ、言葉の代わりに舌を絡め合い…。
彼女の唇から甘い、甘美な、言葉で表しようのない吐息がこぼれ、それは本当に甘い香りを放っていた。
濡れたままの服で冷たかった体が、内側から火照ってきた。
彼女を暖めるために抱きしめていた手が、役目を終え、行き場を探し始めていた。