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夢…獏の喰わぬ夢
第3章 春雨
彼女は意識を失ったままだったのか、眠りについたのか、しばらく動かなかった。
体に刻まれた衝撃は、まだ彼女を小刻みに震わせていたが、
それは彼女のと意識とは関係のないもののようだ。
僕は彼女の髪を撫で背中に優しく手をおいた。
僕だって平常心でいられた訳じゃない。
いつか誰かとこういうことになるだろう。
体の欲求とは別に、常に冷めた自分がいた。
周りのもの達が、すごく興味を剥き出しにして、
親から離れ一人前の男になるべく、性の話をあからさまに話しているのを耳にすることもあったが、
自分には当分先のことであるし、遅いことを恥じることもなかった。
それが、隕石のように降ってきた彼女と、スコールのように突然、こんなことになってしまったのだ。
互いの体はそれが必然であることを証明していたが、今彼女にかける言葉は思いあたらなかった。
罪悪感はなかったが、彼女の気持ちを言葉で確認しなかったので、どのような言葉をかけたらよいのかわからなかったのだ。
そしてそんな時は彼女に任せた方がうまくいくことを僕は学習していた。