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夢…獏の喰わぬ夢
第3章 春雨
全身に残る余韻と体温で裏付けられる彼女の存在に身を任せ、幸福感にまどろんでいた。
ぴくりと彼女の体が動き、
彼女は顔を上げて僕を覗き込んだ。
「どっちが良かった?」
「どっち?」
僕はオウム返ししかできない。
「だから、…最初とその次のと、」
(まったくなんて質問するんだ!どっち?
どっちも良かったし、どっちなんて決められるか!)
「私はどっちも最高だった!優しいのと、激しいのと」
彼女は遠慮も恥じらいもなくズケズケと言いづらいことに触れる。
「あのね、最初って怖くて痛いものだと思ってたの、
苦痛に耐える期間がしばらくあると思ってた。
その怖さを女だけが一人我慢するのはズルいなって、」
「ズルいって…」
「だってあなたは最初から気持ち良さそうだったわ!」
(僕が初めてとわかってるんだ。でも彼女も初めてだとはっきり今言ったよね。)
「でもね、」
彼女は今更ながら恥ずかしそうに耳もとに寄ってきて、誰かに聞かれるはずもないのに囁いた。
「怖くなかったし、痛いのはちょっとのあいだで、とっても良かった。き・も・ち・よ・か・っ・た・の」
彼女の目が大きく開いて
計算しているのだろうか?僕は完全に彼女に参ってしまっていた。