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夢…獏の喰わぬ夢
第4章 五月晴れ
彼女が車窓を鏡にして、スタイルを確認している。
それは嬉しそうに見えた。
僕がここから見ているなんて気づきもしないで…。
僕は次の駅で彼女のいるドアに移った。
驚かそうとギリギリで閉まりかけのドアから滑り込んだ。
ガラス越しの場所を取られて迷惑そうな顔をした彼女に
「おはよう、今日は早いね。」
と自然に声をかけることができた。
「おはよう。昨日はぐっすり眠って
(そこで、彼女は、あんな事があってぐっすり…なんだと僕に伝えようと、ちょっとイヤらしい顔つきをした)
早く目覚めたの」
「僕も…、だけど、起こしてくれればよかったのに。」
「だって、夢の続きになったら…終わりがなさそうだったもの。」
なんとも悪戯な瞳。
ドキッとしたが、僕はもう動じない、
のではなく平気なふりをするのが無駄で、
そんな無駄は、謎だらけで全てお見通しの彼女を知るのに妨げにしかならないとわかり、抵抗しないのだ。