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夢…獏の喰わぬ夢
第6章 過去
「兄貴とは、年が離れていたから、兄弟って感覚はなかったな。
小さいうちは甘やかされていたのに学校に入ってから、
僕が兄貴と比べてあまりにも出来が悪いから、両親は何で同じことが出来ないんだと始終比較された。
余計やる気がなくなっちゃったんだな。成績も何も中ぐらい、どうせ兄貴のようには出来ないんだからと、
下になって叱られないようにみんな中ぐらいを目指してたよ。
大学は行くもんだと言われていたからね。親元から通えない東京の外れみたいなウチを選んだ。」
「かわいそう。あなたは、皆の鏡のようなお兄さんの影に怯えて、自分を影にしてしまったのね。
あなたは優しい人、心の奥深くを理解する力を持っている人。少なくとも私にはなくてはならない存在よ」
彼女が抱きついてきた。
僕は他に大して話す自分がないので、何を話すか考えてしまった。