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初戀 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第2章 恋の距離
何と言っていいか分からずに俯く綾香を優しく見ながら、当麻は隣をゆっくり歩く。
浅草の道は車やバス、人力車、自転車などが所狭しと慌ただしく行き交う。
せっかちな人力車が綾香の隣を掠めていきそうになった時、当麻が素早く綾香を自分の方に引き寄せた。
長身の当麻の胸に抱き込まれるような形になる。
肌触りの良いシャツに頬が触れる。
…その奥の当麻の逞しい筋肉と温かい体温も…
「…あ…」
綾香は身体を強張らせた。
「ご、ごめん…ぶつかるかな…て思って…」
当麻は申し訳なさそうに謝る。
「大丈夫…」
胸の鼓動を聞かれたくなくて、綾香は身体を離す。
しかしすぐに、
…嫌がって離れたと思われたらどうしよう…。
と不安になる。
…別に…そう思われてもいいのに…
自分の感情を持て余してしまう。
…こんな事、初めてだよ…。
黙ってしまった綾香を気にすることもなく、当麻はのんびりと声をかける。
「…すっかりいい陽気になったね。綾香さん、今年お花見はした?」
「…ううん。忙しくて…」
「そうか…」
「望己さんは…?」
当麻は嬉しそうに振り返る。
…名前を呼ばれるだけで喜ぶなんて、変な人…。
「高校の同級生と、ゼミの仲間と二回ね。お花見の後に精養軒で会食したよ」
「へえ…」
やっぱりお坊ちゃまは違うな…。
お花見するだけで高級レストランで食事するのか…。
「上野公園を歩いたけど、桜、綺麗だったなあ…」
「ふうん…」
…上野公園かあ…。浅草と目と鼻の先なのに何年も足を運んだことがない。
当麻が一息吐いてから口を開く。
「…来年は…綾香さんと一緒に行きたいな…お花見…」
「え?」
思わず当麻を見上げると、その大きな美しい瞳と目が合った。
子供みたいに一途な瞳が、不安げに尋ねてくる。
「…だめかな…?」
「…いいけど…」
綾香はぶすっと答えてそっぽを向く。
「え⁈い、いいの⁈」
綾香の肩を掴まんばかりに驚いて聞き返す当麻に綾香の方がびっくりする。
「…お、お花見でしょ…?…別にいいよ…」
「やった!やったぞ!」
ぴょんぴょんと子供のように飛び上がりながら喜ぶ当麻に、慌てて袖を引っ張る。
「やだ、やめてよ」
「だって!綾香さんが僕とお花見に行ってくれるって!バンザイ!バンザイ!バンザイ!」
子供のようにはしゃぎながら万歳三唱をする当麻に綾香はあっけに取られる。
浅草の道は車やバス、人力車、自転車などが所狭しと慌ただしく行き交う。
せっかちな人力車が綾香の隣を掠めていきそうになった時、当麻が素早く綾香を自分の方に引き寄せた。
長身の当麻の胸に抱き込まれるような形になる。
肌触りの良いシャツに頬が触れる。
…その奥の当麻の逞しい筋肉と温かい体温も…
「…あ…」
綾香は身体を強張らせた。
「ご、ごめん…ぶつかるかな…て思って…」
当麻は申し訳なさそうに謝る。
「大丈夫…」
胸の鼓動を聞かれたくなくて、綾香は身体を離す。
しかしすぐに、
…嫌がって離れたと思われたらどうしよう…。
と不安になる。
…別に…そう思われてもいいのに…
自分の感情を持て余してしまう。
…こんな事、初めてだよ…。
黙ってしまった綾香を気にすることもなく、当麻はのんびりと声をかける。
「…すっかりいい陽気になったね。綾香さん、今年お花見はした?」
「…ううん。忙しくて…」
「そうか…」
「望己さんは…?」
当麻は嬉しそうに振り返る。
…名前を呼ばれるだけで喜ぶなんて、変な人…。
「高校の同級生と、ゼミの仲間と二回ね。お花見の後に精養軒で会食したよ」
「へえ…」
やっぱりお坊ちゃまは違うな…。
お花見するだけで高級レストランで食事するのか…。
「上野公園を歩いたけど、桜、綺麗だったなあ…」
「ふうん…」
…上野公園かあ…。浅草と目と鼻の先なのに何年も足を運んだことがない。
当麻が一息吐いてから口を開く。
「…来年は…綾香さんと一緒に行きたいな…お花見…」
「え?」
思わず当麻を見上げると、その大きな美しい瞳と目が合った。
子供みたいに一途な瞳が、不安げに尋ねてくる。
「…だめかな…?」
「…いいけど…」
綾香はぶすっと答えてそっぽを向く。
「え⁈い、いいの⁈」
綾香の肩を掴まんばかりに驚いて聞き返す当麻に綾香の方がびっくりする。
「…お、お花見でしょ…?…別にいいよ…」
「やった!やったぞ!」
ぴょんぴょんと子供のように飛び上がりながら喜ぶ当麻に、慌てて袖を引っ張る。
「やだ、やめてよ」
「だって!綾香さんが僕とお花見に行ってくれるって!バンザイ!バンザイ!バンザイ!」
子供のようにはしゃぎながら万歳三唱をする当麻に綾香はあっけに取られる。