この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
初戀 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第4章 天使のなみだ
数日後、当麻が女中に給仕してもらいながら、朝食を摂っていると、スーツ姿の父親が上機嫌でダイニングルームに入って来た。
母親が家政婦に朝食の指示を出す。
「おはようございます。お父様」
感情の篭らない声で挨拶をし、コーヒーを口に運ぶ。
父親が当麻の前に仰々しい革張りの大判のアルバムを置いた。
「見合い写真だ。目を通しておけ」
当麻はゆっくりと父親を見る。
「…見合い写真?誰のですか?」
父親は高らかに笑う。
「お前のに決まっているじゃないか」
「…バカバカしい。僕はまだ18ですよ?大学に入学したばかりなのに」
吐いて捨てるように呟く当麻に、母親がおろおろしたような視線を投げかける。
…お父様のご機嫌を損ねてはだめ。
…小さな頃からずっと言い聞かされてきた言葉だ。
母親の縋るような視線を振り払うようにして、当麻は立ち上がる。
父親は上機嫌のまま、話し続ける。
「相手の父親は私の大学の同期生で、帝都銀行の頭取だ。お嬢さんは18歳。学習院女子高等科を卒業後、今は花嫁修業中…。趣味はテニスに乗馬にピアノだそうだ。お前となかなか趣味が合いそうじゃないか。
…実は、このお嬢さんは去年の夏に軽井沢のテニスクラブでお前を見染めたらしい。父親にどうしてもお前に会いたいと泣きついたそうだ。
…写真を見てみろ。なかなかの美人だぞ」
「…お言葉ですが、お父様。僕はどなたともお見合いする気もありませんから。どうぞ、丁重にお断り下さい。失礼します」
「望己さん!」
母親が首を振りながら止めようとする。
…なんでそんなに父親に気を使うんだよ!
当麻はやるせない気分になる。
父親は気にせず、続ける。
「私も学生の本分は勉学と思っている。…だが、帝都銀行の頭取のお嬢さんと懇意になっておくのは悪いことではない。一度、会っておくくらいはいいんじゃないか?なにしろあちらはお前に首ったけらしいしな」
父親の高笑いが勘に障る。
当麻は、父親を見つめ宣言する。
「申し訳ありませんが、僕にお見合いする意思はありません。悪しからずご理解下さい。…授業がありますので失礼します」
ダイニングルームを足早に出る当麻に母親が追いすがる。
鷹揚な父親の声が聞こえる。
「いい。放っておけ。照れているのだ。しかし望己はモテるのだな」
「は、はい…」
当麻は父親の高笑いを腹立たしく聞きながら、部屋を後にした。
母親が家政婦に朝食の指示を出す。
「おはようございます。お父様」
感情の篭らない声で挨拶をし、コーヒーを口に運ぶ。
父親が当麻の前に仰々しい革張りの大判のアルバムを置いた。
「見合い写真だ。目を通しておけ」
当麻はゆっくりと父親を見る。
「…見合い写真?誰のですか?」
父親は高らかに笑う。
「お前のに決まっているじゃないか」
「…バカバカしい。僕はまだ18ですよ?大学に入学したばかりなのに」
吐いて捨てるように呟く当麻に、母親がおろおろしたような視線を投げかける。
…お父様のご機嫌を損ねてはだめ。
…小さな頃からずっと言い聞かされてきた言葉だ。
母親の縋るような視線を振り払うようにして、当麻は立ち上がる。
父親は上機嫌のまま、話し続ける。
「相手の父親は私の大学の同期生で、帝都銀行の頭取だ。お嬢さんは18歳。学習院女子高等科を卒業後、今は花嫁修業中…。趣味はテニスに乗馬にピアノだそうだ。お前となかなか趣味が合いそうじゃないか。
…実は、このお嬢さんは去年の夏に軽井沢のテニスクラブでお前を見染めたらしい。父親にどうしてもお前に会いたいと泣きついたそうだ。
…写真を見てみろ。なかなかの美人だぞ」
「…お言葉ですが、お父様。僕はどなたともお見合いする気もありませんから。どうぞ、丁重にお断り下さい。失礼します」
「望己さん!」
母親が首を振りながら止めようとする。
…なんでそんなに父親に気を使うんだよ!
当麻はやるせない気分になる。
父親は気にせず、続ける。
「私も学生の本分は勉学と思っている。…だが、帝都銀行の頭取のお嬢さんと懇意になっておくのは悪いことではない。一度、会っておくくらいはいいんじゃないか?なにしろあちらはお前に首ったけらしいしな」
父親の高笑いが勘に障る。
当麻は、父親を見つめ宣言する。
「申し訳ありませんが、僕にお見合いする意思はありません。悪しからずご理解下さい。…授業がありますので失礼します」
ダイニングルームを足早に出る当麻に母親が追いすがる。
鷹揚な父親の声が聞こえる。
「いい。放っておけ。照れているのだ。しかし望己はモテるのだな」
「は、はい…」
当麻は父親の高笑いを腹立たしく聞きながら、部屋を後にした。