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初戀 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第4章 天使のなみだ
翌週の朝のことだ。
自室で当麻が大学に行く支度をしていると、母親が遠慮勝ちに入って来た。
「…望己さん、お父様からの伝言なのですけれど…」
当麻は振り向く。
「何ですか?」

仕立ては良いが地味な着物を着て、地味な化粧をしている母親の顔を見る。
美しくまだ四十半ばだというのにいつも目立たぬように派手に見られぬように気遣いながら過ごして来た母親…。
幼い頃、当麻は若くて美人なのに、常に地味な身なりの母親が不満であった。
一度、当麻が
「お母様も他のお母様みたいに、ドレスを着て学校に来て」
とねだった時に、綺麗な舶来のドレスを着て参観日に来てくれたことがあった。
それは美人の母親に大層似合い、級友たちが
「当麻君のお母様は美人だね」と囁くのを誇らしげに聴いていた。

…しかし…
心ない級友の母親達に
「…やはり当麻様の奥様は、お里がねえ…」
「派手なドレスをお召しになると、洋妾のようにお品がなくて…」
と陰口を聞かれているのを知り、それからは一切華やかに装うことをしなくなってしまった。

そんな母親を哀れに思う一方で、その卑屈さを密かに憎んでしまう自分に自己嫌悪を覚える…。
当麻にとって母親は複雑な存在であった。

「…今日の夜、お外で望己さんとお食事をしたいと仰っているの。行ってくださるわよね?」
…またあの縋るような目だ。
実の息子に、なぜそんなに気を遣うのか。
「…お母様はいらっしゃらないのですか?」
母親は慌てたように目を伏せる。
「…私など…そのような場所に伺うなんて分不相応ですから…」
「どうしてですか?お母様はお父様に気を遣いすぎですよ。もっと堂々となさればいいのに」
つい腹立たしげに言ってしまう。
母親は怯えたように首を振り、懇願するように当麻を見つめてメモを手渡すと
「…必ず行って下さい。お父様のご機嫌を損ねないで下さいね。お父様は望己さんをとてもご自慢に思われて、期待しておられるのですから…」
と、部屋を出て行ってしまった。

当麻はため息をつきながらメモを開いた。
…はっとして目を凝らす。
「…湯島のボンシャスに7時…」

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